「介護口腔ケア推進士」検定試験 一般社団法人 総合健康支援推進協会
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食を楽しむ第一歩は口腔ケアから~口臭の悩みも解消         介護用品とおもわれていた口腔ケア製品が異例のヒット         2015.12.18.〈fri〉堀川晃菜

JBPressにこんな記事が載ってました。和光堂の口腔ケア商品の開発者を取材して、さらに新商品の紹介ですが要介護者シニアの方の口腔ケアについてもう一度原点に立ち返えれる読み物です。

 

 

 

食べたら、歯を磨く――。当たり前の何気ない日常の動作が、もしできなくなってしまったら。そこに感じるストレス、そして健康への影響は想像以上に大きいものだろう。

近年、口腔ケアの需要が高まる背景には、深刻な「誤嚥性肺炎」の問題がある。

 

 

うがいや歯磨きで細菌を飲み込んでしまうことも

 

肺炎は日本人の死因の第3位を占め、65歳以上の高齢者が97%を占める。そして、高齢者の肺炎の中でも特に多い誤嚥性肺炎は、口腔内で繁殖した細菌が、気管に入り、肺で炎症を起こす。つまり、適切な口腔ケアをすることで、予防することができる肺炎なのだ。

 

しかし、その予防ケアをすることは、要介護シニアにおいては決して容易なことではない。特に寝たきりの場合や、認知症の人においては自分で歯を磨くことが困難で、その介助は非常に難しいという。

 

「介助者が要介護シニアの方の口の中を磨く際は、強すぎては傷つけしますし、優しすぎてもきちんと磨けません。どこまで手を入れていいのか、その感覚が非常に難しい」

 

そう話すのは、和光堂で10年以上にわたり高齢者向け口腔ケア商品の開発に携わる開発本部 マーケティング部 課長補佐の高橋愛子さんだ。

 

自社の口腔ケア製品を前にする和光堂 開発本部 マーケティング部 課長補佐の高橋愛子さん

 

さらに、要介護状態になると唾液の分泌が減ることで、唾液による自浄作用が得られなくなり、健常な人よりも口の中が汚れやすくなる。また、嚥下障害(飲み込み障害)がある場合は、うがいや歯磨き中の唾液を誤飲すると、かえって気管に口腔内の細菌を流し込むことになる。口腔ケア自体がリスクになりうるのだ。

 

要介護シニアの口腔ケアは、推奨される3つのステップがある。(和光堂「口腔ケアに大切な3つのケア」より)

 

1)歯磨き: 口腔ケアの基本。ブラッシングとうがいで歯垢を除去する

 

2)口みがき:食べかす、痰(たん)、細菌によるネバネバ汚れを除去。歯茎、舌、上あごなどの口腔粘膜をきれいにする

 

3)保湿ケア:口の中の乾燥を防ぐために、口腔内を保湿し、粘膜を保護する。乾燥による口臭予防にも効果的。

 

保湿剤のミストで口の中の湿度を保つ

 

これまでの保湿剤の主流はジェルタイプだ。しかし、塗ったときの違和感を抱く人も多く、指やスポンジを介して塗るひと手間が必要だった。また、指を入れられることが苦手で、噛んでしまうといった問題もあった。

 

そこで、これらを解決する新たなアイテムとして和光堂が開発したのが、「うるおいミスト」だ。

 

「うるおいミスト」は、介護・介助時の使いやすさを追い求めて誕生した。

 

「ミストを噴霧するような製品は今までも市場になかったわけではないのですが、ノズルがないタイプがほとんどでした。ご自身で使われる場合には良いのですが、誰かにやってあげようとした時にノズルがないと不便なんです。とくに、要介護状態になると口を大きく開けられなくなる方も多い。そうすると、ノズルがないと、うまく口の中に噴霧できずに顔にかかってしまったりします」

 

「また、ノズルがあったとしても、勢いよく直線的に噴霧されるとむせやすくなり、口全体にも広がりにくくなります。また、液量が多すぎても誤嚥の原因となります」

 

「うるおいミスト」では、専門医のアドバイスをもとに、口の中に確実に噴霧できるノズルを採用した。また、全体に広がる噴霧形態で、噴霧量も適量が出るように調整している。さらに、保湿剤がサラサラしすぎていると誤嚥のリスクが高まるため、細心の注意を払った設計がなされている。フレーバーや使いやすさについては、実際に介護施設で試してもらい、使用者の意見を反映させた。

 

健常シニアからも予想以上の大きな反響

 

こうして誕生した「うるおいミスト」は20149月に発売されると一躍大ヒット商品となった。

 

その背景には、要介護シニア、健常者シニアを問わず多くのシニアが共通して抱える大きな悩みがある。

 

口に関する悩みについて高齢者にアンケート調査を行った結果、要介護者、健常シニアともに第2位に挙がったのが「乾燥」だった。とくに65歳以上になると急激に増え、要介護者よりも割合は若干低くなるものの、健常シニアの5人に1人は乾燥を気にしているという結果となった。

 

そして、悩みの第1位は「口臭」だ。これにも、第2位の「乾燥」が関わっている。口臭には、食事によるものや、内臓が関わるものなど、さまざまな要因があるが、ドライマウス外来を訪れる人の多くが口臭に悩んで来院しているという。前述のように、口が乾くと唾液による自浄作用が減るため、細菌が繁殖しやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクが高まるほか、口臭にもつながるのだ。

 

口臭を気にしたり、口が乾いて言葉を発しづらくなったりすることで、積極的に会話ができないと悩む人も少なくない。特に女性の方がホルモンの関係で、より乾きやすくなるのだという。

 

「うるおいミスト」はまさにこうした悩みに応えるものだった。

 

「メーンターゲットは要介護高齢者で、健常のシニアの方にも使っていただけたらいいなと思っていたのですが、発売を開始すると、健常シニアから1200件以上の問い合わせをいただくこともありました。予想以上の反響に驚きました」

 

「普段は飴をなめたり、ペットボトルのお茶を常備したりして乾燥対策をしているが、歯を磨く必要もあり、トイレも近くなる。だからこうした商品を待ち望んでいた」という声が多く寄せられたという。

 

介護現場を想定し、手軽に、安全に使えることを追求した「うるおいミスト」は、介護用品というイメージを越えた日常品として、広く受け入れられている。これまで、口腔ケア製品を「自分のもの」として捉えていなかった健常シニアにも、広く受け入れられた結果だろう。

 

 

 

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