「介護口腔ケア推進士」認定試験 一般社団法人 総合健康支援推進協会
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誤嚥性肺炎予防をどうすればできるのか

東京オーラルマネジメント研究会が学術研修会を開催(2)


前回、海老原先生のお話から、嚥下反射の低下と咳反射の機能障害が、誤嚥性肺炎を引き起こすことを述べました。

 施設などでは、よく入居者の嚥下機能に合わせた食事を提供しています。それは良い方法なのですが、海老原先生はさらに「おいしい食事の要素」を提供することで、本人の食欲がわき、さらに嚥下機能の改善が見込まれることに言及しました。日本の食事は実に多様です。「おいしい食事の要素」とは、味覚(甘味、辛味、渋味、旨みなど)、風味(コク、匂い)、食べ物(テクスチャー、温度、色と光沢、音)、さらに、食事をする環境(誰と食べるか、どこで食べるか)、会話心身の状態などが挙げられています。食物にとろみを付けたりミキサーにかけたりするのは、テクスチャーの範疇です。

 先生が着目したのは温度でした。VTで見ると、嚥下反射誘発のときに冷たい水と常温とお湯を入れてみると、反射が異なりました。こうした刺激は脳の島皮質の血流を上げる作用があるのですが、暖かかったり冷たかったりすると刺激が島皮質に届いて反射が起こりやすいそうです。海老原先生は前職の東北大学でもこの研究を行ってきましたが、東邦大学では、この嚥下反射作用向上のためにカプシエイト類含有の粉末を食事に応用していく予定だそうです。さらに先生の研究では、黒コショウで刺激することで嚥下反射が良くなることも判りました。

 誤嚥性肺炎を予防する上で重要なのは口腔ケアですが、口腔内の細菌を少なくすることはよく知られますが、これらを除去すると同時に嚥下反射と咳反射を刺激することを考えてほしいと述べました。つまり、食事をする前に嚥下の刺激を加えて、口腔リハビリテーションを行い、そのうえで嚥下機能を考えたおいしい食事を提供していくとよいということです。東北大学でも嚥下障害がある入院患者さんには、こうしたプロセスを絶食時から嚥下開始食、嚥下食、そして常食へのプロトコールを作ってきました。これによって再誤嚥の発生が1/3に抑えられたということです。

 現在、東邦大学では各病棟のリンクナース(看護師長の直属)の協力の下で、入院患者さんの嚥下評価をしてもらっています。嚥下に問題のある患者さんには、看護師、言語聴覚師、栄養士、歯科医師、リハビリ医師が作り「嚥下チーム」が介入して誤嚥再発を防ぐようにしているということです。また、認知症や脳血管障害、パーキンソン病などの原因疾患がある患者さんについては、各担当科の医師・看護師と協力しながら治療を行っているとのお話でした。誤嚥に対するこうした視点が、いっそう患者さんの口腔ケアの効果を上げることにつながっていくのではないでしょうか。

 学術研修会の後半では、歯科衛生士、ICU担当看護師、歯科医師、言語聴覚士、口腔ケア最近測定器の研究者によるワークショップが行われました。研修会には、歯科医師、歯科衛生士、急性期病棟看護師、訪問看護師などが参加し、熱心な議論が繰り広げられました。