今回で「介護報酬で口腔ケア・経口摂食を評価」の項目は、最終回です。11月6日の第113回社会保障審議会介護給付費分科会では、「論点3」として「療養食加算」の見み直し案が出されました。
「療養加算」は、主治医が出す「食事せん」に基づき、糖尿病食、腎臓病食、肝臓病食といった疾病を治療する上で必要な療養食を提供する場合に加算が認められます。ただし、「経口移行加算」または「経口維持加算」を算定している場合には認められていません。
厚生労働省は、「療養食を提供している人の6割は、摂食・嚥下機能が低下している人である実際の状況を考えると、経口移行加算、経口維持加算との併用した加算を可能にして、評価の見直しを行ってはどうか」という案を出しました。
平成25年の厚生労働省データでは、老人保健施設と介護療養型医療施設では約30%の人が、特別養護老人ホームと地域密着型介護福祉施設では10%の人が、療養食加算の対象です。こうした人への「口腔ケアや摂食・嚥下訓練を可能にして、口から食べることを持続的に可能にしていこう」という考えだと思います。
これに対して委員からは、「医療保険の診療報酬との整合性を図らなければならない。介護報酬だけ甘くするというのでは納得出来ない」というきびしい意見が出されました。たしかに整合性を図る必要はあるでしょうが、高齢者が口から食べるための支援の質を上げることを考え、診療報酬の次期改定で風穴を開けるためにも介護報酬からの改正も必要なのではないでしょうか。
各委員からはその他にもさまざまな意見が出されました。3つの論点全体について、「今回の提案は良いと思うが、介護保険受給者の多くは居宅で暮らしている。施設だけではなく、居宅で介護を受けている人や、受給者以外の高齢者にも口腔ケアは必要だと考える。検討してほしい」、「食べることは人間の尊厳につながることでもある。予防の要素も取り入れるべきではないか」という積極的な意見が出されました。厚生労働省からは、「今回の提案は、あくまで介護保険3施設について」という見解を示しています。
「口から食べる楽しみ」の支援の充実について、厚生労働省が提案をする時代になりました。今後いっそう「口からおいしく食べること」を目指す動きが活発になるのではないでしょうか。